泥酔状態で、こんな名文句を
サラリと書き上げた「あいは」嬢。
人の金だと思って、遠慮なく何杯もお酒を飲む「あいは」嬢。
そんな「あいは」嬢を見て、俺はこう思った。
「この女、いつか漫画のネタになるかも」
まだどうなるかわからないけど、
その時は写真をモザイク無しでバンバン使いたいので、
一応許可を取っておく必要性がある。
自分が赤羽の漫画を描いている旨を説明し、
機会があったら是非漫画に使わせて頂けないものか
お願いしてみた。
・・・しかし、彼女の職業は、日陰のおっぱいパブ嬢。
進んで顔を出したがる人がいる業種とは思えない。
なんと、快諾。
写真も自由に使ってよいとのこと。
でも、口約束だけでは不安なので、一筆念書をお願いすることにした。
言われるがままにスラスラと念書を書く「あいは」嬢。
・・・本当にいいのだろうか?
仮に、彼女の勤めるおっぱいパブ店の名を晒すことによって、それが少しでも宣伝になり、
指名客にも繋がり、現在の売り上げNO4からNO1に登りつめてやろうという
魂胆があるならまだわかる。
しかし、彼女の漫画に出る条件は一つ「店名を出さないこと」。
ただの物好きであろうか?
それとも、頭がおかしいだけであろうか?
彼女の書いた念書を見て、またもや驚かされる。
「私あいは 清野さんのマンガに全面協力します M田Y江」
なんと、文末に本名でのサインが・・・!!
源氏名の「あいは」で全然問題ないのに、自ら進んで本名を書いてくるとは・・・
「こういうことは、ちゃんと書かなきゃ駄目でしょう?」
そう呟いて「あいは」嬢は微笑んだ。
・・・この女、何なんだろう?
実はすごく純粋で良い子なのではないだろうか。
だんだんそう思えてきた。
何故だかよくわからないが、先程からしきりに「あいは」嬢が、
「キャバクラに行こう」と誘ってくる。
女がキャバクラに行きたがるなんて、少し妙ではあるまいか。
良い子と思った直後に、ある言葉が脳裏に浮かんできた。
情はあるけど
ぼったくる町
赤羽
・・・・俺たちに酒をおごらすのは、ほんの序章で、本当の狙いは
提携する別のキャバクラに連れて行って、そこで思う存分に金をふんだくる為に
俺たちに声をかけたのではあるまいか。
漫画出演快諾という「情」を見せた後に、悪徳キャバクラで
心行くまで俺たちをぼったくろうとしているのではあるまいか。
そんな疑念に駆られたので、帰ることにした。
店を出るなり、奇声を上げ始める「あいは」嬢。
閑散とした深夜の商店街で、寝転がる「あいは」嬢。
その後「あいは」嬢は、俺たちと別れの挨拶も交わさぬまま、
別のおじさんを捕まえて、夜の赤羽の町に消えていった・・・
あのおじさん、ぼったくられなきゃいいけど・・・・。
余談。
終始絶句気味だった『東京都北区赤羽』担当石井氏。
この時、彼は編集者になって一ヶ月目の、希望に胸躍らせる新人であった。
それがイキナリこんな訳のわからない漫画の担当に就かされた挙句、
訳のわからない町に呼び出された挙句、訳のわからないおっぱいパブ嬢に絡まれた挙句、
終電も逃す羽目に。
しかもこの翌週には強制的にペイティさんと絡まされ、
その翌々週には「ちから」のマスター夫妻とも絡まされ・・・・
ご苦労様です。
# by kurukurupaaaa | 2009-08-15 05:20 | 街人